1988年1月6日この世に生を受け、1月20日生後2週間でシェルは我が家の子供になりました。
まだ足も立たず、私の耳たぶをしゃぶるシェル・・・戸惑いながらの生活。
大切に、大切に無我夢中で育てました。
甘えん坊さん、我が儘、寂しがりや、シェルの性格がしっかり板に付きました。
よく食べ、よく吠え、元気一杯のシェル。
9歳まで病気知らずで過ごしました。
ところが9歳の夏、散歩を嫌がり、食欲不振、その日の夕方病院に行くと子宮蓄膿症と診断。
出血多量死の恐れもある危険な状態でした。
即入院。深夜に緊急手術をしてもらい危機を乗り越えました。
そして、14歳の秋、シェルのお尻にしこりを発見し、病院で診てもらうと肛門腫瘍。
年齢的なこともあり麻酔・手術には抵抗がありました。
しかも、その腫瘍は手術してみないと、悪性なのか良性なのか分からないとのこと。
意を決めて、手術してもらうことにしました。
しかし、その月は旅行の予約をしてあり、旅行から帰ってからの手術・・・
不安と心配。これが最期の旅行になるかもしれません。
行き先は伊勢。伊勢神宮で「手術が成功して腫瘍が良性でありますように・・・」
心から手を合わせてきました。
そして1週間後に手術。幸い腫瘍は良性。
あの時の喜びは安堵感と共に鮮明に思い出されます。
その後シェルは老犬特有の白内障・難聴を患いながらも食欲魔犬。元気でした。
足腰も衰え、目はほとんど見えず光をほんの少し感じる程度でした。
私がシェルの目となり、足となり、シェルの生活を支えてきました。
なんとかシェルの目を見えるようにしてあげたい!!
白内障の手術をして貰える病院。富山では無理。
目が見えなくても生活出来る。先生の言葉に諦めきれない私。
友達から名古屋の病院を紹介して貰い、その先生とまず電話でお話しさせて貰いました。
白内障の手術はたとえ成功しても、後からのケアーが大変だとのこと。
長期間の通院を覚悟しなければなりません。
しかも、シェルの年齢を考えると、迷うところがあります。
実際、悩みました。考え抜いた末
諦めよう・・・手術を断念しました。
私達夫婦はシェルと沢山思い出を作りました。
シェルに良いと思われる事、思う物、何でも試みました。
15歳の誕生日を迎られたこと、涙が出るほど嬉しく、その反面来年の誕生日は・・・
迎えることができるのか・・・寂しさが見え隠れするお祝いでした。
15歳と6ヶ月。春から夏に季節は移り変わろうとする6月。
元気だったシェルの異変。
食欲不振・何度も嘔吐。慌てて病院へ
2週間前の血液検査では数値に異常は見られなかったこともあり注射・お薬を貰って一日様子を見ることに。
翌日になっても嘔吐は治まらず、血液検査をしてみると腎臓の数値が異常に高いことが分かりました。
先生の表情は厳しく、危険な状態。即入院。
病院で治療中のシェルを思い、涙・・・。眠れぬ夜。
一日点滴・薬の投与。一向に数値は下がってくれません。
これ以上の期待は出来ない・・・と判断され、今夜が山・・・。
そう先生から宣告され、シェルを家に連れて帰りました。
今夜無事に乗り越えられたら、明日早朝、また病院で点滴です。
一晩中寝ずの介護が数日間続き、涙・・・涙の毎日を過ごしました。
何も食べなくなったシェル。
食べなければ体が益々弱るばかり・・・
しかし、腎臓病は低タンパク食を心がけなければなりません。
何でも食べさせるわけにはいかないのです。
市販の食品は塩分も多く高タンパク。
ふと思い立ったのは、人間の腎臓病食です。
人間の総合病院に行き低タンパク食品の麺類・ビスケット・クッキーを買い求め
わらにもすがる思いでシェルの口元に差し出すと・・・食べてくれました!!
その時の私、例えようの無い喜びでした。
シェルに奇跡が起きました。
数値が下がり始めたのです。
その時から少しづつ食欲も出て、腎臓病食のフードもカリカリ!食べるようになるまで回復してくれました。
それからの毎日、週に2〜3回。いえ、行ける時は毎日のように皮下点滴に通いながら週に1回の血液検査・・・
シェルの健康管理に努めました。
顔で笑って心で泣いて。神経ピリピリ。気が休まらない毎日でした。
10月。シェルの数値が安定している時に、私達夫婦は旅行を決意しました。
先生も「行ける時に、行って下さい」と、言って下さり、その言葉の重さ・寂しさを感じたことは確かです。
行き先は伊勢。
お友達が沢山集まりとても楽しい旅行になりました。
今思えば、行けてよかった・・・行ってよかった・・・と思います。
シェルの最期の旅行。お友達に囲まれて今までで一番思い出深い旅行になりました。
旅行から帰宅後も皮下点滴に通院の日々が続き・・・
11月20日。この日シェルはとても元気でした。
ワンワン♪クンクン〜トボトボ良く歩きました。
とても可愛い仕草を見せてくれ、何枚も写真を撮りました。
夕食は完食。大好きなカニを食べてご満悦。
夕食を終え、寝床でスヤスヤ眠るシェル。
いつもの穏やかな夜・・・と思いきや、急に手足をバタバタ。目は白黒、視線が定まりません。
慌てて病院に電話をしシェルの症状を伝えました。
「毛布に包んですぐ連れて来て下さい」
外はどしゃぶりの雨。ワイパーが利かないほど雨が降りしきっていました。
「シェル!頑張れよ!!」「シェル!シェル!!」
私達はかなり動揺していました。
病院への道のりがこれほど遠く感じたことはありませんでした。
病院に着いてもシェルの痙攣は治まらず、先生の表情は険しそうでした。
鎮静剤も効き目が無く、最期の手段・・・麻酔で痙攣を抑えるしか手段はありませんでした。
麻酔。老犬にとってとても危険です。
その麻酔を点滴に加えることで痙攣を抑えるしか出来ませんでした。
24時間、麻酔を流し続けるシェルの体は植物犬。
先生は麻酔の量を多くすることで安楽死も・・・とおっしゃいましたが
私達にはそれは絶対出来ませんでした。
シェルの命が尽きるまで・・・
たとえシェルの意識が戻らないと分かっていても、一筋の望みを抱いていたのです。
シェルを病院に託し、私達は夜中に帰宅。
もうシェルはこの家に帰ることは出来ない・・・そう思うと涙が出て止まりません。
涙で夜を明かしました。
早朝、病院から電話があり「シェルちゃんは今のところ麻酔で落ち着いています。面会に来て下さい」
着の身着のまま病院へ。いつシェルの息がとまるか分からない状態。
シェルの体をさすりながら、涙・・・涙。
「シェルちゃんを家に連れて帰られますか?2時間だけですが・・・。どうします?」
私達は迷いました。シェルの体に負担になりはしないか。それも2時間だけの外出。
未練が残り、侘しくなるばかり・・・迷ったあげく、お断りしました。
悲しみに暮れながら帰宅。すると、病院から電話があり
「病院でシェルちゃんと一緒に過ごしてあげて下さい。身の回りの物を持って今すぐ来て下さい」
「病院で一緒に過ごせる?いったい何処で?」
そんな気持ちの傍ら、先生の言葉がとても嬉しく、すぐさま身支度をして病院へ急ぎました。
病院に着くと、シェルと私達にお部屋を用意してありました。
台所・お風呂・・・生活できるペンション風のお部屋。